日本の復興=発展のパートナー、アジアを探求する

内藤 耕   東海大学 文学部 アジア文明学科
アジア研究 /研究領域:国際社会学 ]

アジア研究を選んだのは、日本と違う国、社会への憧(あこが)れでした。震災前は、そういう思いが今の若い人たちとなかなか共有できない歯がゆさを感じていました。おそらく、この日本の日常があまりにも居心地がよかったからなのでしょう。「内向き志向」が批判されていましたね。

でも、3.11は多くの人たちが言うように、そうした日常が極めて危うい現実であったということを私たちに教えてくれました。以前、アジアは怖(こわ)いと言っていた学生がいましたが、いまや日本が外国からリスクをもってみられています。

こうした状況のなかで思うことは、主体的に生きること、そして人と人の連帯が大切であるということです。誰かによって用意された日常ではなくて、生活を自分でつくり出していくこと、3.11後の私たちは逆説的に言えば自立して生きるチャンスを得たのかも知れません。

今度の震災では、東北の工場とアジアの工場がサプライチェーンでつながっていたということにも驚きを覚えました。震災からの復興は、アジアをはじめとする諸外国との関係のなかで、日本の位置を確認していく作業になるでしょう。ことあるごとに悪口を言い合っていた中国からも、たくさんの支援が届いています。連帯のなかで、自らの立ち位置を確かめながら進んでいくことが求められています。

私の専攻するアジア研究は、日本の復興=発展のパートナーであるアジアの国々がどういう社会なのかを明らかにしていきます。重要なのは、その社会が日本と違っているというだけでなく、同様に危うい日常の上に乗っかっているということなのかもしれません。日本もアジアも同じ地平の上で歩んでいく。復興の「興」は、アジアをはじめとする新興国の「興」でもあります。成熟したかに思われていた日本社会は、アジア同様にふたたび動き出すことになるでしょう。

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ないとう・たがやす/1962年静岡県生まれ。
インドネシアの人々の暮らしを追う作業を続けています。普通の生活者にインタビューを重ねることで、その社会の構造や価値観をあぶりだそうと試みています。休みが多いだろうと思って大学教員の道を選びましたが、実際には土日も働いています。予定通りに行かないのが人生のおもしろさなのかもしれません。

被災された生徒・先生方へ

神戸のときもそうでしたが、今回の震災は静岡県出身の私には、未来を見ているような感覚でした。平穏に流れる日常が一瞬にして寸断されてしまう様は、被災地以外の私たちにもなにか生き方の見直しを迫ってくるようです。

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