だからEUは直ちに日本救援に動いた~学問と実務の相乗効果

植田 隆子   国際基督教大学 教養学部 政治学・国際関係学デパートメント
国際関係論、欧州研究 /研究領域:EU外交 ]

私の専門の国際関係論や欧州の国際政治、EUは、極めて具体的な対象である。日本からは遠い世界の出来事のようであるが、5月28日の日本とEUのサミットで、予備交渉に入ることが合意された経済連携協定は、交渉が将来妥結(だけつ)すると、欧州からの輸入品や、欧州に輸出する日本車の価格が欧州で下がるなど、生活に結びつく側面もある。

現在、起こっている様々な国際問題を理解した上で、よりよい方策を立てる、それが私が理想とする、学問の社会への貢献である。そのためには書斎にこもらず、現場に赴(おもむ)くことが必要というのが私の考え方であり、現地での学術調査のみならず、二度ほど日本外務省に勤務して、外交の実務に就いた。

2008年7月から2011年3月末まで、外務省欧州連合日本政府代表部の政治安全保障担当の次席大使として、ブリュッセルで勤務した。今回のサミットで双方に合意された日本とEUの間の「人道支援緊急援助活動、災害への準備・予防に関する調整の改善と協力の強化」は、EU側と日常的に接触、意見交換していた中から2010年春ごろに生まれた私のアイデアであり、第三国での災害を想定している。ブリュッセルで「植田イニシアチブ」と呼ばれ、日本の震災前に日本側が正式提案し、EU側からの賛同が得られていた。私自身、日本の今回の災害は全く予想していなかったが、逆に日本が提案せずに被災していれば、日本をEUが支援するという文言に留まっただろう。無論、EUは今回、迅速(じんそく)に日本支援に乗り出した。

日本とEUは防災の研究や、第三国での災害現場で協力することになる。被災した日本が内向きにならず、世界に対し、EUと共に、協力と貢献を打ち出したことは、世界に対する力強いメッセージである。今回の災害の対処の経験と復興は、世界に向けての貢献になる。

本人写真

うえた・たかこ/香川県生まれ。
広い世界の中で生きたいと思い、日本で最初に開設された国際関係学科に進学し、第一級の先生に出会ったことから研究を志しました。書いた本は、100年後でも読まれることによって永遠の生命を持ちます。最近、1989年に刊行した私の本に、探していた問題が書いてあったと、ある教授から感謝され、意を強くしました。

被災された生徒・先生方へ

災害が発生したときには私はブリュッセルに住んでおり、EUや現地の方々から、お悔(くや)みや日本との連帯表明が多数、寄せられました。欧州のみならず、世界中の人々が、応援しており、インターネット情報が見られるようでしたら外務省のホームページ「がんばれ日本! 世界は日本とともにある」をご覧ください。きっと勇気づけられるでしょう。

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