多言語化がつくる、外国人にも住みやすい社会

日比谷 潤子   国際基督教大学 教養学部 アーツ・サイエンス学科
社会言語学 /研究領域:言語と社会、言語変化、言語変異 ]

私の専門分野は社会言語学です。この領域では、ことばのさまざまな側面を、社会との関わりの中で考えています。日本の社会で近年注目されていることの一つとして、外国人登録者数の増加が挙げられます。法務省入国管理局が毎年発表する数字の最新版(「法務省入国管理局平成21年末現在における外国人登録者統計について」参照)によると、2009年末の登録者は2,186,121人でした。これは日本の総人口の1.71%に当たります。日本のあちこちで暮らしている外国人の数は、約20年前から増え続けてきました。2009年には過去最高だった前年から31,305人減少したとはいえ、10年前と比べるとほぼ63万人の増加です。その中には、学校でみなさんと一緒に勉強している人も含まれています。

このような状況の中で重要なのは、生活に必要な情報を多言語で伝えることです。みなさんが住んでいる地域の市(区)役所のホームページを見てください。何ヶ国語で書かれていますか?次に他の地域と比べてみましょう。言語の種類は同じですか?それとも場所によって違いますか?また、どこの家庭でも、可燃ごみ、不燃ごみ、粗大ごみ等に分別してごみを出しますが、回収曜日等に関する説明は日本語だけですか?他の言語でも書かれている場合には、何語が使われていますか?駅の案内はどうでしょう。

日常生活はもちろんですが、災害時には、危険についての情報およびその後の対応に関する種々の情報が多言語で配信されることがきわめて重要です。例えば大阪大学世界言語研究センターは、「このホームページは、じしんに そうぐうした、がいこくじんに、たくさんのげんごで、じょうほうを ていきょうするものです。」という記述で始まる「震災情報提供ホームページ」を作成・公開し、放射線の安全、農作物の人体への影響、被災者・支援者のストレスといったトピックについて、さまざまな言語で説明しています。

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ひびや・じゅんこ/1957年東京都生まれ。
私は、こどもの頃からことばに関心を持っていました。学部時代にはフランス語を専攻しましたが、言語学という分野があることを知り、本格的に学ぶようになったのは、大学院に入ってからです。趣味はピアノと歌唱です。言語学者には、音楽に興味のある人が多いようですね。

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