いざとなればゼロからすべてを作り上げるのが本物の「専門家」
| 根上 生也 | 横浜国立大学 理工学部 数物・電子情報系学科 |
東日本の復興のために数学者は何ができるのか。アーティストや著名人たちが現地を訪れ、被災者のみなさんを励ますことに尽力されているが、数学者である私が同じようなことをしたところで、とうてい喜ばれるとは思えない。まだ出番ではないのだと思う。
そもそも数学者とは何なのか。数学という学問は、理工系の知識や技術の基礎を提供している。なので、数学者はそういう知識をたくさん持っていて、技術計算も超高速でやってのけると思われがちだ。しかし、本当の数学者は知識にたよってものを言うことを嫌(きら)うし、具体的な数の計算をさせるとミスばかりする。もちろん、分野によっては計算に長(た)けた数学者もいるが、少なくとも私はそうだ。しかし、いざとなれば何でも自分の頭で考えて問題解決ができると信じている。
もちろん、瞬時に問題を解決できるわけではない。あくまで自力で問題を解決しようとする覚悟があるということだ。いざとなったら0(ゼロ)からすべてを作り上げるぞという覚悟。それこそが専門家の証(あかし)なのだと思う。
近頃の大学生の中には、何でもかんでもインターネットの中に答えが用意されていると思っている者が少なくない。災害によってサーバが破壊され、電力の供給も途絶(とだ)えてしまったとき、彼らはどうするのだろうか。すべてのツールを失ったとしても、私なら地べたに棒(ぼう)切れで図を描き、計算をして、失われた知識や技術を再生しようとするだろう。
専門家になるということは、いざとなれば0からすべてを再生する責任を負うということだ。意味も考えずに公式を覚え、計算できるだけ。そんな状態では何も再生することはできない。専門家となって日本の復興に貢献する。そのためには、大学に入ったらどんな勉強をすればよいのか。もちろん数学を勉強しただけでは直近の問題は解決できないけれど、あなたが専門家になるという覚悟を持つことは、日本の復興・再生に陰ながら貢献していることなのだと私は思う。
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