未知なるものを探求し、創造しよう~21世紀の再生医療を私達の手から

辻 孝   東京理科大学 大学院基礎工学研究科
再生医学 /研究領域:発生生物学、細胞生物学 ]

「私がいまの時代に生まれてきて果たすべき役割(天命)とは何か」、高校生の時のふとした疑問だった。

いま、日本に経験したことがない天災がおこり、福島の原子力発電所は回復のめども立っていない大きな人災となった。医療のシステムは高度化し、平均寿命は延びたものの、克服(こくふく)できない病気はまだ数多く残されている。

私は、もともと医学・生物学に関心があり、高校生の時に岡田節人先生が書かれた「試験管の中の生命」を読んでその方向が確定した。しかし高校でも、その後の大学でも、「過去に解決された事実」を勉強することに価値を見いだせなかった。実に劣等生である。

大学4年生になった時に、「卒業研究」なるものに出会い、「もうすでにわかったことはやってはいけない」、「何か新しい事実を実験研究によって解き明かす」のだという。教科書にもどこにも書いてないことを自分たちで考えて解いていくことの面白さにとりつかれた。勝手に自説を出張して、時間を忘れて実験を楽しんだ。実におもしろい…。「学ぶ」から「創造する」への転換。これが大学であり、学問だと確信した。

「自分の役割」を医学・生物学の中に見出し、「研究者として自立」するために大学や民間企業の研究所でさまざまな医学・生物学研究を行いながらライフワークとしての研究対象を探した。そしていま、大学の教員として、若い学生諸君と「病気で困っている人の役に立つこと」を目指して「再生医療」の研究を行っている。移植しか助かる手段がない患者さんのために、「私たちにしか考えつかない技術を創造して貢献する」ことが目標である。

「創造」によって災害や環境問題、新エネルギー開発、新しい医療システムを創りだすこと。この「創造」が出来る人間になるために、「創造」の蓄積である「学問」を学ぶことの意味がある。そして未来の世界を支える新技術の「創造」によって、人間社会が成長し、さらに学問も人間も成長していくのだろう。

大学という学びの場にいる教員として、「学問」を受け継ぎ、次の時代の成長に向けた「創造」ができる人材育成をすること、そして自分自身も若い学生諸君と共に未来に向けた新技術を「創造」することが「私の使命」だと考え、今日も研究に励んでいる。

先生の研究室や活動を知りたい人はこちら
東京理科大学・総合研究機構 辻孝研究室
http://www.tsuji-lab.com/

本人写真

つじ・たかし/1962年岐阜県生まれ。
病気やけがなどで機能を失った組織や器官を再生によって治療する再生医療。21世紀の新たな医療システムへと発展することが期待されています。私は、臓器や器官をまるごと再生する臓器置換再生医療の実現に向けて、歯や毛の再生をモデルに研究を進めています。東京理科大学総合研究機構教授、株式会社オーガンテクノロジーズ取締役

被災された生徒・先生方へ

被災に遭われた皆様に心からお見舞いを申し上げます。若い学生諸君や先生方には、いま直面されている困難さの中で、いまどのような技術があれば役に立つか、理想的な新技術は何かを考えていただければと思います。そして一生懸命学んで、将来、その技術をみんなで「創造」することによって、理想的な社会システムができるよう一緒に頑張りましょう。

本サイトは、経済産業省のキャリア教育事業の一環で作成した「わくわくキャッチ!」の独自コーナーとして、河合塾が作成し、運営しています。
Copyright(c)2011 Wakuwaku-catch.All Rights Reserved.
河合塾河合塾