人には、誰もが平等に時間を与えられています。ただし、時間にはおのずと限りがあります。その限られた時間のなかで、人が得るべき最も重要な人生の喜びとは、その人ができうる範囲で精一杯、知的世界を広げることではないかと思います。ところが、最近の若者は「お金の心配はしなくてもいいから」と言われても、内向きになり“外”へ出ていかない。それは、世界に出て知的経験を積むことが、人生を心豊かにするものにするうえでいかに大事ですばらしいことか、気付いていないように見受けられます。
また、自分らしさというのは、教養と格闘することによってはじめて見えてくるものです。知的土台も十分ではないのに、自分が何者かわかったような気になり、個性を主張するのはあまりにも安易過ぎるし、もったいない。自分の可能性を放棄しています。
「なぜ学ぶのか」「自分とはいったい何なのか」
普遍(ふへん)的に容易に答えを見出せないこの問いかけに、自分自身の答えを見つけようとすることこそ、人生の面白みではないでしょうか。