研究と社会をつなぐ架け橋になろう!~「誰もがわかる成果」をめざして

澤田 結基   福山市立大学 都市経営学部 都市経営学科
雪氷学、地形学 /研究領域:高山と極地の地形、永久凍土 ]

1995年の兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)の時、私は大学3年生でした。震災が発生して2週間が過ぎたころ、登山仲間と寝袋を抱え、被災した芦屋(あしや)市へボランティア活動に入りました。破壊された町の光景は、忘れることができません。買い物でよく来ていた三宮の街並みが壊れたことは強いショックでしたし、電車に少し乗れば被害が少なく、ふだんと変わらない生活があることのギャップも衝撃でした。

兵庫県南部地震は、神戸や淡路島の直下にある活断層が動いた「内陸型地震」です。神戸に活断層があり、大きな地震を起こす可能性があることは、研究者の間では知られていましたが、行政や市民には伝わっていませんでした。「神戸に地震はない」と信じていたところに、不意打ちを受けたのです。

阪神・淡路大震災のボランティアでは、避難所に泊まりながら、倉庫になった高校で支援物資の仕分けを手伝いました。多くの人の悲しみに触れた経験は、博物館の業務として取り組み始めた「アウトリーチ活動」の原動力になっています。アウトリーチ活動とは、研究成果を市民にわかりやすく伝え、また市民の意見を研究者に届ける活動のことです。

私たち研究者は、地震や火山噴火がどのように起きたかなどの専門的な論文を読む訓練を受けています。しかし、難しい論文や報告書の内容を市民にそのまま伝えても、防災にはつながりません。災害に強い社会をつくるためには、研究成果を誰もがわかる形に翻訳(ほんやく)して、研究者・行政・市民の間で共有することが、とても大切です。

例えば皆さんが、自治体で災害対策を担当することになったら、論文や専門家の意見を理解し、そこから具体的な行動指針を考えて市民に伝え、また市民からの質問に答えなければなりません。学問の成果を理解して、筋道を立てて人に説明する技術は、文系理系を問わず、すべての学問分野に共通して必要なことです。すべての研究の目的は、最終的に人に伝え、社会に役立てることにあります。どの分野を学ぶことになっても、この技術をぜひ、大学生のうちに身につけてほしいと思います。

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本人写真

さわだ・ゆうき/1975年東京都生まれ。
標高が高い山岳地帯や、北極圏アラスカなどの寒冷地に分布する「永久凍土」のでき方や、その融解によって起きる地形の変化を調査しています。また、地学専門の博物館「地質標本館」で3年間、市民に広く研究成果を知っていただくための活動を行いました。人の一生を超える長い間隔で繰り返す巨大災害や、ゆっくり忍び寄る地球温暖化の影響を、どうしたら身近な脅威(きょうい)としてとらえることができるか考えています。

被災された生徒・先生方へ

私も仙台・石巻に家族と親戚がおり、被災地に入りました。今はとてもつらい状況と思います。しかし、災害の記憶は、必ず次世代に伝えなければなりません。風化しないうちに、体験記や写真などの記録を集める作業が必要です。学校は、地域社会の拠点です。ぜひ、地域の被災の記録と記憶を残していただけますよう、お願いいたします。

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