学びとは「真面目に考えられる」ようになること~仙台からのメッセージ

竹茂 求   国立仙台高等専門学校 広瀬キャンパス 情報電子システム工学専攻
物性理論、細菌検出技術 /研究領域:画像処理、薬剤感受性試験、細菌自動検出 ]

私が勤務する国立仙台高専は東日本大震災で被害を受け、多くの尊い命が犠牲になりました。震災発生から2ヶ月後に学校を再開できてホッとしましたが、「大丈夫だった?」と私が声をかけた学生が「家を流されました」と笑顔で答えた時、震災は過ぎ去っていないことを痛感し、いたたまれない思いになりました。父を亡くしたある学生は、「遺体が見つかっただけでもありがたい」と言う母の横で、健気(けなげ)でした。我々や国は、これらの学生の勉学を支援する責任があると痛烈に感じています。

私は大学の物理学科に入学し、大学院で物性理論を専攻しました。物理学は自然法則を解明する学問で、原子力の原理や地震発生のメカニズムの解明も研究対象です。その中で物性理論は、電気抵抗をはじめとする物質の性質の起源を理論的に説明することを目的とし、現代のコンピュータ技術などを支えています。このように物理学は、人間社会や科学技術の進歩にとって重要です。しかし、物理学に限らずどんな分野でも、学問をすることの意義はその直接的な恩恵以外にもあると思います。

私は、学問にも学生の指導にも厳しいことで高名な物理学者K先生に憧(あこが)れて大学に入学しました。特定の先生を慕(した)って志望大学を決める高校生は多くないと思いますが、私の場合はK先生に指導を受けた兄の影響でした。できの良くない私は、大学院で研究成果をあげるのに人一倍の苦労と時間を要しましたが、K先生に指導を受けたことは、私の人生の宝になっています。何を学んだのかと問われて、それは「真面目(まじめ)に考えること」あるいは「分かることと分からないことを明確にすること」の大切さと答えれば、中高生の皆さんは拍子抜けするでしょうか。

しかし、人は困難な問題に直面したとき、困難であればあるほど、問題を直視しないで容易な解決法を選択しがちです。例えば福島の原発事故の問題も、私には、本当に真面目に考えることの難しさの一面が現れているように思えます。とことん真面目に考えるためには、問題が高度であればあるほど、確実な知識と理解が必要です。学ぶことの意義は、いろいろな問題を真面目に考えることができるようになることだと思っています。

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たけしげ・もとむ/1955年鳥取県生まれ。
Ce(セリウム)化合物の電子エネルギーの不思議を、数学とコンピュータを使って解明する物理学の研究で博士になりました。現在は、コンピュータの画像処理で、細菌を迅速(じんそく)に正確に検出する技術を企業と共同で研究開発しています。広瀬キャンパス副校長

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