Knowledge is power. 知識が力になり、将来をひろげる

宮地 充子   北陸先端科学技術大学院大学 情報科学研究科
情報セキュリティ /研究領域:セキュリティ、暗号、インターネット ]

小学生の私が数学に興味をもつようになったきっかけは「クレタ人の嘘(うそ)つき」でした。クレタ人の嘘つきとは、「クレタ人が『クレタ人は嘘をつく』という」の文を指(さ)し、自己言及のパラドックスと言われます。つまり、「『クレタ人は嘘をつく』が真ならば、クレタ人は嘘をつくのでこの文は偽になり、『クレタ人は嘘をつかない』ことになる。ところが、嘘をつかないクレタ人の発言なので、この文は真になり、『クレタ人は嘘つき』になる」という論理が無限に続きます。「文章の真と偽を考えることで、矛盾(むじゅん)が明らかになる」。そうして私は数学好きになりました。

漠然(ばくぜん)と数学好きで過ごしていた私が、理学部数学科への進学を決めたのは高校3年生の時。流行の就職先を意識して学科を選ぶ友達も多く、私もかなり悩みました。「私は何になりたいのか?」。最終的には、「時代はこれからも変わる、時代が変わっても生きていけるように、今は好きな数学をもっと勉強しよう」。そんなふうに不安な自分を納得させて、進路を決めました。無事に大阪大学理学部数学科に入学。高校数学とは全く違う数学の世界に魅せられ、ますます数学が好きになる毎日でした。

転機が訪れるのは4回生の時。長大な数学の歴史の中で構築された理論を理解し、新しい理論を証明するのに学部4年間は短かすぎます。数学を本格的に勉強するために大学院への進学を考えましたが、当時の数学科では大学院進学は非常に少なく、まわりの友達が就職先を決める中で、大学院への進学の気持ちは揺れ動きました。とはいえ、「私は何ができるのか?」に回答できない状況で就職先も考えられないという葛藤(かっとう)の日々が続きました。私が大学院進学への迷いを断ち切ったのは、恩師の「1つの道で専門家になってからでも遅くない」という言葉でした。そして大学院修了後、「私は何ができるのか?」という問にようやく明確な回答を持てるようになりました。

私は現在、北陸先端科学技術大学院大学で情報セキュリティの第一線の研究者として、世界初の研究成果の国際学会での発表や国際標準化、また、情報セキュリティ分野を支える新しい研究者・技術者となる学生達を育てています。研究成果の発表や論文は英語ですし、国際規格化では各国代表の方との交渉が必須です。私の研究室の学生には海外からの留学生もいます。中高時代に学習した英語は私の研究と国際標準化、教育活動を支えますし、中高時代に学習した国語や社会の知識は海外の研究者や他の研究分野の第一線の研究者との交流の幅を広げることにつながっています。もちろん、理科、数学の知識が研究の土台を支えることは言うまでもありません。

中高校生の皆さん、時代は変わりますし、確実なことを現時点で決めることはできません。自分の将来の可能性を広げる方法、それは中高校生時代に身についた知識に他なりません。「Knowledge is power.」はフランシス・ベーコンの言葉です。身につけた知識こそ、何が起こっても果敢にかつ柔軟に乗り越えていける実力を身に付けることにつながります。そして、自分ができることで最大限の力を発揮することこそが一番の社会貢献です。だからこそ、しっかり学んで欲しいと、私は考えます。

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みやじ・あつこ/大阪府生まれ。
ゲームソフト、DVD、 CD、最近では本も電子書籍として、ディジタルデータで構成されています。ディジタルデータは、インターネットを通して誰とでも交換できる性質をもちます。情報セキュリティとはディジタルデータを第三者から秘匿する方式やデータそのものの正しさを保証する方式を研究する、ディジタル世界の安全・安心を支える研究分野です。 北陸先端科学技術大学院大学附属図書館長

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