一人でも多くの命を救うために~防災学は学問の壁を超える

卜部 厚志   新潟大学 災害復興科学研究所
地質学 /研究領域:自然災害科学 ]

災害から命や生活、財産を守りたい。このための取り組みは、医学(災害医療)だけではなく、理学、工学、農学、社会科学、経済学…など、理科系、文化系を問わず多くの学問分野が取り組める大事な課題です。防災は理・工系のやることだけではありません。

災害を少しでも軽減するために、研究や普及活動を多くの研究者が行ってきました。災害は、考えたくないこととして、ふだんの生活の中ではあまり浸透してこなかったことですが、東日本大震災を受けて、研究ではわかっていた災害でなぜ多くの方を失ってしまうのかという思いを強く受けました。地震災害に関係した研究を行うきっかけは1995年の阪神大震災です。それまでは地質学を学び、地層のでき方などを考えてきましたが、多くの住宅が倒壊した中で被災者を見ていくうちに、「なぜこんな悲惨なことになってしまうのか、学問は何のためにあるのか」を強く感じました。これ以降、地質をキーワードとして、液状化などの地盤災害、地層に記録された災害の痕跡(こんせき)などから、2004年の中越地震をはじめとして、多くの被災地の調査に取り組んできました。

自分の研究できる範囲は、災害の全体に対しては、すごく狭い範囲のことかもしれません。しかし、自分の得意とする学問から災害を考えていくことは可能です。災害は予測・軽減だけでなく復興も重要な取り組みです。自分の関心のある学問をまず学んで、専門性を高めた上で、一人でも多くの命を救うための防災学にチャレンジしてみませんか。

また、地震による災害の中で、津波が来ること、家が壊れてしまうこと、自分や家族の命を守ること、惑わずに災害から立ち上がることと合わせて、今回の原子力災害のように、自分の周りで起こっていることを正確に理解して、自ら判断して対応していくことが必要です。そのためには、理科系、文化系を問わずに基本的な科学の知識を持つことが重要です。理科は不得意と思うかもしれませんが、受験のための理科と科学的な基礎知識は異なります。生活をしていくため、世の中で起こる少し理科系のできごとを迷わずに判断するためには、私は文系だからと思わずに、基本的な科学を考える知識を身につけることが大事です。専門は大学に入ってからで十分です。幅広い知識をもって、災害に立ち向かっていきましょう。

先生への感想・質問がある場合はこちら
※◎を@に変更してメールをお送りください。
urabe◎gs.niigata-u.ac.jp

本人写真

うらべ・あつし/1966年埼玉県生まれ。
地層に記録された災害や活断層の運動、地震が起こったときの地盤(地面)が関係した災害の予測と軽減に関する研究を行っています。

被災された生徒・先生方へ

強い意志を持ちながら立ち上がってください。また,皆さんの経験を発信してください。経験を生かして、決して忘れることのないように多くの方に伝え続けます。同じことが二度と繰り返されないように取り組みことが、我々の誓いです。

本サイトは、経済産業省のキャリア教育事業の一環で作成した「わくわくキャッチ!」の独自コーナーとして、河合塾が作成し、運営しています。
Copyright(c)2011 Wakuwaku-catch.All Rights Reserved.
河合塾河合塾