社会は常に変わり続ける~自立しながら支えあうための学び

潮木 守一   名古屋大学 名誉教授
教育社会学 /研究領域:人間の発達と成長。社会のあり方が変わると、成長のしかたがどう変わるのかという点 ]

今回の災害でまず思い出したのは、第二次世界大戦に日本が負けた時のことです。戦争に負けた日本はもうぜいたくな生活はできない、一生涯貧乏な生活をしなければならないと教わりました。皆さんには想像もつかないでしょうが、戦争が終わるまで、私たちの世代はチョコレートを食べた記憶がありませんでした。人間は貧乏になると、お互い奪い合いがはじまります。しかしそうなっては、人間はますます不幸になります。だからわずかな食べ物でも、仲良く分け合って生きていかなければいけない、こう教わりました。

ところが思いもかけず、1960年頃から「高度経済成長時代」が始まりました。デパートには商品があふれるように並ぶ時代がやってきました。私達は、これはぜったい一時だけの夢だと思っていました。いつかはふたたび貧しい時代が戻ってくる、そう思っていました。しかし豊かな時代はかなり長い間続きました。

「もはや豊かな時代ではない」と気づいたのは、1990年代に入ってからです。その頃から駅の構内で夜を過ごす人々の姿が目立つようになりました。それも若くて力のありそうな人まで混じっていることに気づきました。この日本がいつの間にか、人余りの国に変わり、就職できた人とそうでない人とでは、境遇に大きな違いができる国になったことを知らされました。

皆さんに期待したいことは、このように私達の社会は次々に変わってゆくということです。いったい現在我々の社会にどのような変化が起こっているのか、それにつねに関心を持ってください。そして一度「人」という文字をよく眺めてください。この文字は二人の人が互いに支えあって立っている形には見えませんか? 人間は一人では生きてゆけません。どうしても人間同士の支え合いが必要です。しかし支え合うには、一人一人はちゃんと足を踏ん張っていることが必要です。そうでなければ、とも倒れになってしまいます。自立しながら支え合う。この微妙なバランスがいつも重要だと思っています。

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うしおぎ・もりかず/1934年神奈川県生まれ。
今一番関心があるのは、旅です。若かった頃、旅から多くを学びました。1ドル360円、大卒の初任給が1万円だった時代に、はじめて海外に出ました。これは私にとっては実り多い経験でした。海外に多くの友人を作りました。ぜひとも皆さんも挑戦してください。桜美林大学名誉教授

被災された生徒・先生方へ

日本人は底力を持った国民です。第二次世界大戦に破れ、多くの大都会は焼け野原になりました。しかしその後、ちゃんと復興を果たしました。今回の大地震でも海外の人々は日本人がパニックを起こさなかったことに驚いています。今こそ日本人がふたたび底力を発揮する絶好のチャンスです。

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