「大人とは、働くとは、学ぶとは」を問う、中学生へのキャリア教育
中学生への「働くことや学ぶことを伝え、考えさせる教育」つまり「キャリア教育」は、社会が複雑化し仕事が多様化している現在、ますます重要と思われます。しかし日本の教育制度の実状は、働き始めるまでの学習期間が長く学習ルートも多様で、あたかも、一人の人間としての学びや勤労観・職業観を深めるより、有名な学校に入りルートに乗ることこそが大事にされているかのようです。その端的な例の1つが、高校における文理分けコース選択でしょう。
高校カリキュラムの現状
高校に入った生徒の多くは、1年もたたないうちに、学習の効率化のため、文系・理系に分けられます。これは学問による区分で社会(職業・業種など)に依拠しないため、職業意識を深めるようにはなっていません。そして文系から理系へのコース変更はできにくいのが実態です。
有効性が高いにもかかわらず選択されない理数系
ところで、理系に進めば、ほとんどの業種への従事が可能です。しかし文系からでは、エンジニアなど理系の専門的な仕事にはほとんど従事できません。また現代社会では、生活の隅々までテクノロジーが浸透し、日本はこれまで、テクノロジーによって国際的な優位性を保ってきました。理系とりわけ工学離れは、生徒個人から見ても、社会・国家から見ても、大きな損失なのです。
そのような状況だからこそ、中学生のうちに、日本経済の中で仕事がどう分業され位置づけられ社会が回っているのか、学習しにくさで敬遠されがちだが実は展開可能性が高い理系分野の実態、また、仕事に至るまでの学習過程など、知る機会の少ない情報をある程度理解させることは重要と考えます。
生徒の将来の学習選択も視野に入れられるキャリア教育のために
高校進学以降の学習コースの選択は、大学進学を意識した生徒に対して、有無を言わせないところがあります。社会に対する考えや問題意識が十分成熟しないままでの、その選択は、大人に向けて成長過程にある若い人にとって、良いこととは思われません。そんな状況に若い人が向き合っていけるようにしていく、高校そしてそれ以前の中学校のキャリア教育を、少しでも支援できるよう努めてまいりたいと思います。
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