インタビュー5:チームのメンバーをまとめるリーダー

インタビュー5 : チームのメンバーをまとめるリーダー

株式会社内田洋行 マーケティング本部 次世代ソリューション開発センター センター長 村 浩二さんに聞く

村さんたちは、どのようなことを しているんですか?

打ち合わせの様子(左から2番目が村さん )
内田洋行は学校やオフィスの事務機器や家具の製造・販売をはじめ、空間構築やコンピュータのシステム開発にも力を入れている会社です。その先にある、次世代の空間を実現するのが私たちの仕事です。
例えば家具なら、だれでも使いやすいように、高さや幅は標準的な体のサイズに合わせてだいたい決まっていますが、空間となると、学校か会社かお店かによって、使う人も目的もちがいますね。コンピュータ技術とデザイン技術を活かして、それぞれの目的にいちばん合った効果が出るような「快適な空間」を作ろう、というのが私たちの仕事です。
例えば、会社のオフィスや会議室には、家具だけでなくパソコンやプロジェクターで映すという時も、照明や個人の携帯電話など、さまざまな物があります。こういう機器は、1つ1つの製品の性能も高くて機能も多いのですが、メーカーも操作も全部バラバラで、いざ空間の中で組み合わせて使ってみると、すごく使いにくいことがよくあるんです。例えば、これらを情報通信技術(ICT)を使って無線ネットワークでつなぎ合わせて、簡単に使えるようなシステムとして空間の中でデザインして設計し直すと、今までになかったような、便利でおもしろい使い方ができるようになります。
よくある、会議室でパソコンの画面をプロジェクターで映すというシーンの時も、めんどうくさいケーブルもつながず、プロジェクターの画面の切り替えも、部屋の照明を暗くするのも、マイクの音量調整とかも、すべて手もとのパソコンや携帯電話1台で操作できるようになれば、アレコレといちいち動き回らなくても済みますよね。ネットワーク経由で必要な資料もサッと探して投影して。このように、だれが何の目的で使うのかに合わせて、使い勝手のいい快適な空間を作るために、コンピュータと空間デザイン、それにそこで何をするのか(コンテンツ)を融合(ゆうごう)させて、空間全体としての新しい価値を考えるんです。

村さんのチームは、どんな人がいるんですか?

私たちの「次世代開発ソリューションセンター」は、2001年7月にスタートしました。当時、「これからの空間は、コンピュータがもっと小さくなってあちこちにうめ込まれて、それぞれがネットワークにつながる。そうすると全体のインターフェイス(使いやすさ)やコンテンツが重要になる」と予想して、その時代に対応するための技術者部隊を立ち上げた訳です。ITのできる人も本格的に採用しました。しかし、ふつうは会社の部署だと、部長がいて、課長が数人、その下に係長や主任がいて、その下に新入社員が数人ずつ配属されるものですが、このセンターは全くちがいました。組織のリーダーは私だけで、中堅(ちゅうけん)社員が2名、あとは会社の事は何も知らない新入社員全員と2年生社員9名の合計48名で発足されました。文系も理系も混ざっていて、大学時代の専門性もバラバラでした。配属された彼らはびっくりしたと思いますよ。「とにかく今までの内田洋行には無い、全く新しいことを考えなさい。ただし、社内の他部署の人には一切相談してはいけません。社外の人だけとつながって、新しい内田洋行の姿を創りなさい」と言われたのですから。
  • ※インターフェイス:人、機械、空間のそれぞれ同士の関係のあり方のこと

村さん以外はほとんどが入社1、2年生だけだったそうですが、こういう新しいものは、どうやって作ったんですか?

会社から言われたのは、「新しいものを考えなさい」ということだけなので、最初は何をしていいかも全くわからない。だから、みんなで手分けして、最先端(さいせんたん)のコンピュータ技術を研究している、あるいは空間のインターフェイスを研究している国内や海外のいろいろな大学の先生や先端企業の研究所へ行って、相談しながら勉強しました。新しいものを作るために、これら大学の研究室や企業と「共同研究」もたくさん実施(じっし)しました。しかし、普通は「こんなものを作りたいから、いっしょに研究しましょう」と具体的にお願いするものですが、私たちは「これから世の中はこうなるだろう。では何を創ろうか」というところから始まりました。その中で、どんなものを創るか決めていったんです。
社内で唯一(ゆいいつ)連携(れんけい)することを許された空間のデザイナー部隊も強力なパートナーでした。私たちの部署とデザイナー部署がいっしょになって、アイデアを空間の中で具体化する姿は、社外から見てひとつの価値になっていました。そうすることで、相談に行った先の先生や研究者からは、次々と他の先生や会社も紹介していただいて、今では、ユビキタスやインターフェイスの研究をしているところとは、ほとんど何らかのつながりができました。いろいろなおもしろい製品ができてきたのは、いっしょに研究してきたこれらの方々が、応援してくださったからなんですよ。

これからは?

内田洋行は、どこの企業よりも前から「空間と情報の融合」というビジョンを持っていました。それは、古くは1970年代にもさかのぼります。私が入社した20年くらい前も、まだ絵にかいた餅のようなところがありましたが、この20年でコンピュータ技術は劇的に進化して、当時やりたかったことも、今や本当に実現できるようになってきました。これからも、私たちができることはますます広がって、おもしろくなっていきますよ。最近は、私たちの部署が作ったものも実際の製品になって、どんどん販売されています。皆さんが社会人になる頃には、ここに展示してあるものを普通に使って仕事をするようになっているかもしれませんね。
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