あさのあつこさん Special Message

あさのあつこさん Special Message

中学生だから、できること

「何になりたいか、よく考えて進路を選ぼう」とか「将来の目標を持とう」とか。大人はいろいろ心配してくれるけど、「働くって、何?」ってことを考えてみたことはある? 「なんで大人って働かなければいけないの」「お金をいっぱいもらえる仕事の方がエライの?」「得意なものも好きなものもないワタシに、仕事なんて見つかるのかなあ」って。ごちゃごちゃ、ぐるぐる考える。いくら考えても答は出ないかもしれない。

でも、それってとても大事なこと。今だからできることなんだよ。そうやって一人で考えることで、自分にも人にも関心が出てくる。「医者になりたいなら偏差値はどれくらい必要」とか、「トラックの運転手になるにはどんな学校に行く」とかは、もっと後で考えればいい。

できれば言葉にしてみよう。友達でも親でも、誰かにしゃべってみるのがいい。しゃべったことが、自分の考えになる。きついことを言われるかもしれない。「そんなの、誰かに言われただけやろ」って。でもそこからまた頭をフル回転させればいい。何にも考えないで人の言うことに流されて、大人になってから「オレはこんなはずじゃなかった」って人のせいにしても、みじめなのは自分なんだから。

ちょこっと働いてみてもいい。誰かの手助けをするとか、何か作り上げるとか。それで何かが返ってきたら(お金じゃなくても、笑顔とか感謝の一言とか)、「働く」ってことが少しわかるかも。ドキドキしながら、でも何か見つかったり、感じたりする。勉強や部活以外の経験って、新しい世界!刺激だよね。

好きなものがないから、やりたいことがわからないからダメって、今思わなくてもいい。「何かをやるぞ」っていう気持ちがあって、いろんな刺激を受けているうちに、本当にやりたいことは必ず来る。それが何なのか、15歳で出会う人もいれば、30歳でわかる人もいるけど、若いといわれているうちに必ず出会えると思う。わたしは信じています。だから今考えてみよう。勉強だって、「あと5点取ったら学年何番」なんてちっぽけなものじゃない。中学の勉強って、広く浅くとにかくいろんなものと出会うためなんだ。できるできないがあっても、その刺激が自分を作ってくれるんだよ。

どんな仕事をするかは、どう生きるかと同じこと。だから、自分達がどんなふうに働ける社会になったらいいか、考えてみてほしい。働く意欲のある人が、ちゃんと仕事ができるような社会って何か。問題を正していくのは大人だけど、考えるのは中学生だからできることだから。

あさの あつこ

プロフィール あさの あつこ

1956年岡山県生まれ。1991年「ほたる館物語」でデビュー。「バッテリーⅠ~Ⅵ」「ラストイニング」「The MANZAI」「ガールズ・ブルー」などの小説や、中学生との対談や手紙をまとめた「チュウガクセイのキモチ」で、中学・高校生の姿をあざやかに描く。最近は歴史やミステリーにも活躍の場を広げ、幅広い年代の読者から愛されている。

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